第四の目

ボーヴォワールは著書「老い」に、
「60歳を過ぎて書くものは二番煎じのお茶ほどの価値しかない」と記しています。

実はボケ防止や備忘録のために時々文章を書いているのですが、
読み返すと、
前にも同じことを書いたような・・・
長くてくどいなぁ・・・
おいおい〜(老い老い)!となるので、
同意せざるを得ません。笑

さらに、村上春樹さんが、SNSを一切見ない理由を、
「大体において文章があまり上等じゃないですよね。
いい文章を読んでいい音楽を聴くってことは、
人生にとってものすごく大事なことなんです。
だから、逆の言い方をすれば、
まずい音楽、まずい文章っていうのは聴かない、読まないに越したことはない。」
と仰っていたことにも合点。

『賛同するならまずい文章は発表しちゃだめでしょう』という天の声が聞こえ、
ブログからすっかり離れてしまっていました。

それでも今書いているのには理由があります。
嬉しい発見をして、叫びたい気分なのです。
やっぱり良い感情は理性に勝ります。>お天道さま
なので、今日は思う存分書かせて頂くことにします。
(今後は若手の俊輔さんにここを委ねたいと思います)


私は、
自己中心的で主観的な目を第一の目、
1歩引いた視点から自分を眺める客観的な目を第二の目、
全体を俯瞰する目を第三の目と名付けていて、
一から三への順は、人間力の進化に比例しているのではないかと思ってきました。
ですが、この度、その上の「第四の目」を発見したのです!

きっかけを作って下さったのはS美さんです。
ちょうど一年くらい前、長引く自粛生活の中で何をしようか悩んでいる時に、
私の古い日記を見返し
「美織さんの信念は、あの頃と1mmも変わってない」と言って下さったのです。
私にとっては何よりの褒め言葉でとても嬉しかったのですが、
そういえば、私の信念は限られたモノだけに適用してきたことにも気づかされました。
なので、ステイホームというこの良きチャンスに、
家の中のモノに真摯に向き合ってみようと思い立ったのです。


まずは壁紙を全て張り替えてみました。
最初は壁紙を持って脚立に立つ度にブルブル震えていましたが、
慣れて筋肉も付いてくると、快感を感じるようになりました。
それから、閉まり難かったドアを調整したり削ったり、
家中のタイルを一枚一枚磨いたり、
あちらこちらの補修をしたり、細かい調整やペンキの塗り替えなどにも着手。
調子に乗って、チェーンソーで木を剪定したり、
洗面台を外して新しいものを取り付けてみたりもしました。
これは、20歳若返った気分になりました。笑
さらに、外の水道栓を取り換えたり、
ミシンを踏んでソファカバーなども作ったり、
工具を駆使してテーブルを作ってみたり。
料理も素材作りから凝った料理までいろいろとやってみました。
とにかく作る、育てる、直す、生き返らせるの日々。

そうなのです、私の信念は「細部まで手をかけること」

まだまだあれこれ途中で、あと一年ステイホームしても足りないくらいですが、
すでに大きな変化がありました。
手をかけた全てのモノが愛おしくなってきたのです。
壁紙にもタイルにもドアにも味噌にもジャムにもシロップにも、
毎朝、つい話しかけてしまうくらい。
そして、全てのモノを大切にするようになりました。


業者に頼めば、もっと綺麗に仕上げてくれたと思います。
時間もかからなかったでしょうし、
失敗がないだけむしろ費用も抑えられたかもしれません。
でも、ここまでの良い感情は沸いてこなかっただろうなぁと思います。
音楽も同じで、
便利なプリセットを使ったり、業者任せにした時は、
良い感情が沸き起こってきませんからね。
人付き合いも然りです。


というわけで、私はこの、手をかけたことにより生まれる「愛情付きの目」を
「第四の目」と名付けました。
便利な世の中になったことで、忘れられがちな大事な目ではないでしょうか。


さて、今「そんなの当たり前よ!」と思っていらっしゃる方がいるかもしれません。
私だけが知らなかったことかもしれません。
でも、私は第四の目を「自分で発見した」ことに喜びを感じているのです。
自分で考え、それを行動に移し、その結果発見したことから生まれる感情は、
忘れられることなく私の心に刻まれ、
やがて愛や音楽に生まれ変わっていくからです。


ちなみに、ボーヴォワールによると、
音楽や絵は、年を重ねてなお進化していくものだそうです。
ほっ。


milly la foretもステイホーム中に全曲のライブ音源の整備をしたり、
プラグインの勉強&実験をしたり、練習したり。
留まることなく活動しています。
ライブは、二人のワクチン接種が完了したら再開しようと思っています。
請うご期待!

美織

コメント

  1. たけお ぶれ より:

    ほんとポジティブ!!

    見習わなくては、と思わずにいられなくなりました。もうウズウズしてます(笑)ミィラフォーレの生ライブに早く行きたい観たい聴きたいです。

    お互いまだまだ耐える堪える日々が続きましたが、普段やらなかったことにチャレンジしたり、乗り越えましょう。

    美織さん、俊輔さん、アノーの皆さんとの再会を楽しみにしてまーす。

    • miori より:

      確かな目を持つたけおさんの「ポジティブ!!」に丸かった背筋をピンとのばしてもらい、
      お会いしたくてたまらない気持ちに背中をドドンと押され、
      今、アクリル板を物色しているところです。ワクワク〜
      そうなのです、ようやく二人ともワクチンの予約が取れました。いえぃ!