「パルタジェ」制作秘話(3)「Pathfinder」

動画を撮るのに相応しい素敵な場所を探すようになってから、
自分の世界が広がったように感じています。
そして、風景に触発されて、新しい曲が出来るようになりました。

アルバム2曲目の「Pathfinder」は、そうして偶然出会った風景から生まれた曲です。



本当は星空を撮影しに行った高原なのに、
空よりもこの「電波塔と自然が共存する姿」に一目惚れしてしまったのです。
正直、電線などの人工物は「邪魔だ」と常日頃は思っている私ですが、
この時は、この人工物が素敵なモノに見えたのです。
その理由は、恐らく「バランスの良さ」ではないかと思っています。

例えば同じ実力の人が同数集まって合奏をする時、
バランスが良ければ上手に聴こえるのに、
バランスが悪いと下手に聴こえてしまいます。
自然と創造物、誰かと誰か、国と国、仕事と休養、生楽器と人工音、ストレスと自分・・・
何かと何かがうまく共存する方法は、意外と難しいですものね。
パルタジェ=共に生きる、共存することは、
この世のあらゆるモノを保護するのに必要なことであり、
私達人間が心地よく暮らすことにも必要なことだと思うのです。

でも、利便性を優先してしまったり、自己中心的な考えになることで、
「残念な共存」が多いなぁと感じる今日この頃・・・
だからこそ「素晴らしいバランス!」と思えるシチュエーションに出会うと、
感動してしまうのですよ。

聞けば、この電波塔は
長野県は山が多く、一波で全県に行き渡らせるには、
山の山頂から電波を出す以外に方法はないとの判断で、
世界的にも例の少ない「マウンテントップ方式」と呼ばれる方法を採用し、
全県に各種の電波を送っている施設なのだとか。
1箇所で全県に、、、という考えが、まず、素晴らしい!
「最小限」が、良いバランスを保つ近道だと私は信じていますし、
大自然を守る方法でもあると思うので、
にじみ出ていた電波塔の来歴に感心したこともあるのかもしれません。


もうひとつ、曲が出来るきっかけとなったことがありました。
私が撮影していた”道なき道”を、数人の孤独な旅人達が黙々と行き交っていて、
私が電波塔を撮影していると、皆、覗き込んで「やっぱりいいですよねぇ、あれ」
などと話かけてきたことです。

すでに薄暗く、電灯も店も民家も全く無い標高2000mの高原・・・
初めて出会った男性に突然話しかけられたら竦むはずが、
なぜだか、いつもライブに来て下さる方々の顔と重なって、
ほっこり温かい気持ちになったのです。
自分と同じ気持ちの人に出会うことって、
本当に素晴らしいことなんだなぁと改めて思いました。

その時です!かねてから疑問であった「私がオリジナル音楽を作る意味」
が、ようやく分かったのですよー。

私は、自分の思想やセンスなどを曲に込め、発表することで、
仲間=共に生きていく人を探していたのだと。
こうやって自分の足で歩き回って、自分に合ったモノを探し当てている
pathfinderたちに出会うことが、私の制作の目的であり、人生の目的なのだと。


さて、仕事の電話で30分ほど遅れて到着した俊輔さんの反応ですが・・・

「なにあれ、SFみたいでカッコいい!」
「道なき道を歩く旅人も、カッコいいね」

でした。

というわけで、この曲の詞を安心して委ねることが出来ました。笑


メロディは、ポッと自然に生まれたものだけを採用しましたが、
アレンジは時間をかけて、かなーり綿密に工夫を凝らした曲が多いなか、
この曲のアレンジは、全く迷わずささっと作ってしまいました。
私が作っているのではなく、私の中の誰かが作っている・・
ような感じでした。

演奏は外国人達に大いに助けられたのですが、
全員、マルチプレイヤーでアイデアマン!
演奏のみならず、いろいろな面で助けて下さいました。
外国人と共に一から音楽を作り上げることは、
高校生の頃からの私の夢だったので、
叶ったこと自体も嬉しかったことです。

さて、どうやってそれを可能にしたか、ですが、

まず、歌詞を英訳し、コンセプトや動機も英訳し、
楽譜、参考写真と共にメールで送ります。
録音済みの音源、MIDIファイル、DAWファイルを、
オンラインストレージにアップロードします。
そして、それを仲間達にダウンロードして貰うのです。
便利な世の中です。

その後、質問が来るので、それらに随時答えていくのですが、
はやく返事を返さなければならないのに時差もある・・・ので、
Messengerのチャット機能を使いました。

こんなふうにしてとことん話して納得して貰えると、
「こんな感じでどうですか?」という打診の演奏音源が届きます。
それを聞いて、ここは音数が多過ぎるので減らして欲しいとか、
根音はC→D→Eのラインでお願いします、などと伝えます。

この曲は、Hughのベースが入ってから、Seanがギターを入れて、
HughがそのSeanギターに反応してフレーズを弾き直す、
なんてこともあり、
会ったことのない別国に住んでいるHughとSeanが
お互いに「良い演奏だね~」と讃え合う場面もあったりで、
どんどん仲間感、同志感が強まっていきました。
音楽の醍醐味です!


演奏だけではなく、詞も外国人に手伝って頂いたのですが、
英語が間違っていないかだけではなく、
素敵かつ詩的な英語にしたかったので、
言葉のプロであるウェールズ人翻訳家のGeraintにお願いしました。
これ、大正解だっと思います。歌いやすい!
この曲のサビの英語部分は、特に気に入っています。


・・・と良いことが沢山でしたが、とにかくやりとりに時間がかかりますし、
文化の違いで上手く伝えられないこともありましたし、
制作脳から英訳脳に切り替えるのがしんどくて、頻繁に吐きそうになってました。
でも、本当ーーーーーーーーーーーに、世界は広い!世界は凄い!
みんな素晴らしかった!
前から大好きだった方々ばかりですが、さらに大好きになりました。


さて、そのさらに大好きになった外国人の一人Seanが、
アルバム制作中、2回来日したのですが、
その2回目、大阪から栃木に移動する途中、その日の夜に本番があるというのに
「どうしても伝えたいことがあるから、寄ります!」
と我が家に寄ってくれました。



さて、何を言いに来たのでしょう。
次回はSeanの衝撃のひと言で、
アルバムの方向性が変わってしまった話をお伝え致しますね。

miori

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パルタジェ制作秘話
(1)レイン
(2)Stand Still
(3)Pathfinder