「パルタジェ」制作秘話(1)「レイン」

ようやく制作の疲れがとれてきたので
「パルタジェ」制作日記を綴っていこうと思い立ちました。
何も知らないで聴くのとは違った聴き方を楽しんで頂けるのではないかと思いますので、
時々ここを覗いて頂けると嬉しいです。
全15回くらいでまとめようと思っています。

その前に・・・・
次のライブ日程が決まりました!

10/26(土)奈良二見の大ムク、
11/10(日)茅ヶ崎カトリック教会、の予定です。

だいぶ先になってしまいます。
しかも東京圏ではないのですが、
それぞれの場所に合った内容にしようと思っていますので、
良かったら古都や大ムクを堪能ついでに、
茅ヶ崎海岸や風光明媚な景色を堪能しついでにお出で下さいませ。
時間等詳細が決まり次第、お知らせしますね。

では、第1回めを。

——

「パルタジェ」制作日記(1)「レイン」

milly la foret3枚目のアルバムは、1枚目、2枚目の3倍の制作期間を要しました。
理由は「作り方を変えた」からです。
1枚目、2枚目は、出来立てほやほやの曲を収めたので、
それほど時間がかからなかったのですが、
今回は、演奏して考えてまた演奏して
「しっかり自分のモノになってからレコーディングする」
ようにしたので、熟すまでに時間がかかったのです。
産めよ増やせよの商業大国の日本では、そういう時間のかかる方法を
とっている人をあまり見ないのですが、
UKロックのアーティスト、Zaine Griffさんのレコーディングに参加した際、
当たり前のようにそのやり方で制作していたのが心地よく、
しかも、それがとても良い結果を出していたので、
倣ってみようと思ったのでした。

もうひとつ時間がかかる原因になったことは、
「ヴォイシング」に重きを置いてアレンジしようという野望があったからです。

さらにもうひとつ、、、いろいろな良い音を録ってきて、
それを加工して新しい音を生み出そうという野望もあったのでした。

常に新しいことに挑戦するのが、私のモットーですから〜!
と、鼻を膨らませていられたのは最初だけで、
いやー、ほんとーうに大変で、何度諦めようと思ったことか・・・。

アルバムの中で一番最初に取りかかった曲は「レイン」だったのですが、
その「ヴォイシング」の工夫と音の加工の跡が見られます。

「ヴォイシング」に重きを置いてアレンジするとは、
絵で例えるとすると、ベタ塗りではなく、細かい線や点で表現していく方法、
といったら分かりやすいでしょうか。

例えば「レイン」の歌い始めのBm7というコードの箇所。
「シ、レ、ファ#、ラ」というコードトーンをジャーン
といっぺんに弾くのではなく、テンションや経過音も含め、
Bm7の時に使える音をリストアップし、
どのタイミングでどの並びでどのリズムで弾くと素敵なのかを編み出していくのです。
何回もいろいろなパターンで弾いてみながら、
メロディを邪魔をしない、メロディを引き立てる、かつ、新鮮、
それでいて自然な並びのフレージングを考えていきます。
と言うのは簡単ですが、おそらく、順列組み合わせを考えると、
一小節につき候補が何万通りもあるので、
やっているうちに、どれがいいのか分からなくなってしまいます。

さらに、この曲は絵を描くように様々な音を様々な場所に配置したかったので、
水の音、ハープの音、シェーカーなど、他の楽器が入る隙間も作っていかなければなりません。
よって、最小限の音数を目指す必要もあります。

勿論、ハープなどのピアノ以外の楽器のヴォイシングも考え、
そのバランスや、音の受け渡し方法も同時に考えていきます。

まるでパズルです。
頭が沸騰します。笑

で、悩み抜いた結果、歌い出しの8小節は、こんなふうにしました。

ピアノ

ハープ

ガムランっぽい音

三つ合わせるとこうなります。

「なんだー、そんなに考えて、これ?」と思われたかもしれません。
でも、「さりげなく聴こえる」結果がベストだと私は思っているので、
自己満足です。笑

嬉しかったのは、この作業を終えて一つ発見があったことです。
それは、思考の限界を超えたら、ある種の法則が見えてきたことです。
俗に言われる「一周回ると・・」というヤツでしょうか。
なので、2曲目からは、あまり深く考えなくても
手が上手い具合に動くようになったのですよ!一歩前進です。


それから、この曲では森や川で録音してきた音を多用しています。
この曲を聴いた時に頭の中に広がった景色(唯一自分の曲ではないので受け身でアレンジを楽しみました!)を、忠実に再現しようと思ったからなのですが、
現実の音だけだと生々しいので、様々な工夫を凝らして新しい音を創り上げたり、エフェクトを使って不思議感を醸し出してみました。

これは、そのなかのひとつ、Irisというプラグインの画面ですが、
黄色の部分が実際の音の波形です。
この時は、緑になっている部分の周波数帯域をカットし、
右側にあるシンセサイザー部分のツマミを少しづついじりながら、
私の頭の中の森で鳴っている音に近づけていきました。
こうやってひとつひとつの音を創っていくのです。
面白いでしょう?

こんなふうにこの世にない音を生み出そうと思ったのは、
「レイン」のメロディがシンプルかつ目新しかったこと、
映像が目に浮かぶような詞であったことの力が大きいです。
理応ちゃん17歳、俊輔さん19歳の時の作品だったからこそ!
大人には絶対表現出来ない世界に、大人の思想や技をプラスし、
「共存する」幻想的な世界・・・を目指しました。

次回は、「Stand Still」を語る予定です。

miori

———————
パルタジェ制作秘話
(1)レイン
(2)Stand Still
(3)Pathfinder